福井工業大学サッカー部オフィシャルサイト

氏名：田村幸誠
出身校：富山県立富山工業高等学校

中学最後の大会。
左サイドで仕掛けた俺のエラシコは、完璧なはずだった。
だが、無口な10番――島倉に読まれ、ボールを奪われた。

試合後、俺は悔しさを隠して聞いた。

「見えてたのか？」

島倉は目を合わせず、短く答えた。

「バレバレだったよ。」

不思議だった。
腹が立ったはずなのに、次の瞬間、心のどこかで「こいつとまたやりたい」と思った。

高校では同じチームだった。
最初は、火花しか散らなかった。
でも、練習を重ね、無言でボールを蹴るうちに、
俺たちは言葉のいらない関係になっていった。

高校最後の秋。
全国まであと一歩だった準決勝。
後半アディショナルタイム、均衡が崩れ、試合は終わった。
俺は交代ゾーンで出番を待っていたが、名は呼ばれなかった。

ホイッスルが鳴る。
島倉はピッチに立ったまま動かず、俺はジャージのまま、そこにいた。

試合後、何も言わず隣に座り、拳を合わせた。そして、島倉がぽつりと呟いた。

「お前，進路どうする？　俺は、福井工大へ行く。」

迷いはなかった。

「じゃあ、俺も。」

それだけだった。でも、それで十分だった。

今、大学では学科も違い、授業も交わらない。それでも、空き時間も、練習場までの道も、ずっと一緒にいる。
周りから「夫婦みたいだ」って冷やかされる。島倉はムキになってそれを否定してる。

島倉は、ただのライバルじゃない。仲間とか、親友とか、そういう言葉じゃ足りない。

俺にとって、そう、人生のパートナーだ。

だから、もしこの先、引退を選ぶ瞬間が来たなら、俺は、迷わずあいつの隣でそれを迎えたいと思ってる。

そして、そう思わせてくれたもの――サッカーに、心から感謝している。

この競技がなければ、あいつにも、今の自分にも、出会えていなかった。